冬休み、ゆいの祖母は一人で山あいの村に暮らしています。子どもたちが町に出てから、家はとても静かになりました。
ある日、祖母から母に電話がかかってきました。「最近は、話す相手もいなくてね」その声は、少しさみしそうでした。ゆいは、何かできることはないかと考えました。
ゆいは、学校で習った手紙の書き方を思い出し、祖母に手紙を書くことにしました。学校のこと、友だちのこと、好きな給食のことを、便せん三枚にぎっしり書きました。最後に、家族みんなの似顔絵をそえました。
一週間後、祖母から電話がありました。「ゆいちゃんの手紙、何度も読んだのよ。空谷跫音って、こういうことを言うのね」
「くうこくきょうおん?」とゆいが聞き返すと、祖母は教えてくれました。「寂しく暮らしているときに受ける、思いがけないうれしい訪問や便りのことよ。人のいない谷で、人の足音を聞いたようなうれしさ、という意味なの」
それから、ゆいは月に一度、祖母に手紙を書くようになりました。祖母からも、山の季節のようすを書いた返事が届きます。ゆいは、自分の手紙がだれかの空谷跫音になれることを、とてもうれしく思いました。