「お母さん、ぼくのリコーダー知らない?」朝、タイチは家じゅうをさがし回っていました。今日は音楽のテストがあるのです。
机の引き出し、ランドセルの中、ソファのすき間。どこをさがしても見つかりません。タイチはだんだんあせってきました。
お母さんは台所から顔を出して言いました。「昨日の夜、どこで練習してたっけ?」
タイチは思い出しました。昨日は自分の部屋で練習して、そのあと……。ふと、背中のランドセルの横を見ると、リコーダーの袋が、ちゃんとフックにぶら下がっていたのです。
「あった!ずっと背負ってたのに、気づかなかった」とタイチは笑いました。
お母さんも笑って言いました。「灯台下暗し、だね。灯台というのは、昔の部屋の明かりをのせる台のこと。明かりの真下はかえって暗いように、身近なことほど気づきにくいという意味なんだよ」
タイチはなるほどと思いました。遠くばかりさがして、いちばん近くを見ていなかったのです。
その日の音楽のテストは、うまく吹くことができました。それからタイチは、何かをなくしたら、まず自分のまわりから見るようにしています。灯台下暗しを、もうくり返さないためです。