冬の寒い日、ひろとは父といっしょに、近くの山でスキーをしました。朝から夕方まで滑り続けて、体はすっかり冷えきっていました。
帰り道、二人は山のふもとの小さなお店に入りました。父が注文したのは、湯気の立つ熱い豚汁です。
ひろとは、はしを持つ手もかじかんでいましたが、ひと口すすると、体のしんまで温かさが広がっていきました。父も「ああ、五臓六腑にしみわたるなあ」と、目を細めました。
「ごぞうろっぷって何?」とひろとが聞くと、父は答えました。「体の中のすべての内臓のことだよ。それくらい、体のすみずみまで、温かさやおいしさが行きわたるっていう意味なんだ」
ひろとは、もう一口すすりました。たしかに、おなかだけでなく、手の先や足の先まで、じんわりと温まっていくのが分かりました。
家に帰ってから、ひろとは母に話しました。「山で食べた豚汁、五臓六腑にしみわたったよ」母は笑って、「じゃあ、今度はうちでも作ってみようか」と言いました。ひろとは、寒い日に食べる温かいものが、こんなに幸せな気持ちにしてくれるのだと知りました。