ゆなの母は、ある日、押し入れから古いゲーム機を出してきました。母が小学生のころに遊んでいたものだそうです。
「わあ、画面が小さいね。色も少ない」ゆなが言うと、母は笑いました。「これでも、そのころはいちばん新しかったのよ」
母は、昔の話をしてくれました。「お母さんが子どものころは、携帯電話を持っている人はほとんどいなかったの。待ち合わせは、駅の伝言板に書いたりしていたのよ」
ゆなは、おどろいてしまいました。今では、友だちとの連絡も、調べものも、スマートフォンですぐにできます。母は言いました。「十年一昔とは、よく言ったものね。十年もたつと、もう昔のことになってしまう、という意味よ。世の中の移り変わりは、本当に早いわ」
その夜、ゆなは、十年前の自分を思い出してみました。まだ赤ちゃんだったので、何も覚えていません。でも、そのころの写真を見ると、家の中にある電化製品も、町のようすも、今とはずいぶんちがっていました。
ゆなは、今の自分が使っているものも、十年一昔で、いつか「なつかしいね」と言われるのかなと思いました。そう考えると、今の毎日も、なんだか特別なものに感じられました。