六年生のサキは、卒業式の前の日、担任の先生に手紙を書くことにしました。先生には、六年間でいちばんお世話になったと思っていたのです。
サキは、便せんに伝えたいことを書き始めました。でも、書けば書くほど、言葉がたくさんになって、本当に伝えたい気持ちがうすれていくような気がしました。
困ったサキは、お母さんに相談しました。お母さんは書きかけの手紙を読んで言いました。「全部を言葉にしなくても、気持ちは伝わるものよ。言わぬが花、っていうこともあるからね」
サキは、手紙を書き直しました。たくさん書いていた思い出は、一つだけにしぼりました。そして、最後に「先生のクラスでよかったです」とだけ書きました。
卒業式の日、サキが手紙をわたすと、先生はその場で読んで、しばらくだまっていました。それから、目を赤くして「ありがとう。とてもうれしいよ」と言いました。
家に帰ってから、サキはお母さんに言いました。「たくさん書かなかったけど、ちゃんと伝わったみたい。言わぬが花って、こういうことなんだね」。お母さんは、やさしくうなずきました。