人はいさ 心も知らず ふるさとは
花ぞ昔の 香ににほひける
( 紀貫之:きのつらゆき )

よみかた

ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひ(おい)ける

歌の意味

人の心というものは、さあ、昔のままかどうかは分かりません。

しかし、このなじみの里では、梅の花だけは昔と変わらない香りで咲き誇っていますよ。

詩の背景

久しぶりに訪ねた宿で、主人の問いかけに対し詠まれた一首です。

人の心の移ろいやすさと、変わることのない梅の花の香りを対比させることで、変わらぬものへの愛着と、過ぎ去った時間への切なさを巧みに表現しています。

「紀貫之:きのつらゆき」は何をした人?

紀貫之(868年頃〜945年)は、平安時代前期を代表する歌人であり、和歌の歴史において極めて重要な役割を果たしました。

勅撰和歌集である『古今和歌集』の選者の一人として中心的な役割を担い、その撰者としての活動は後の歌壇に大きな影響を与えています。

また、かな文字で綴られた日本最古の日記文学『土佐日記』の作者としても知られており、男性がかな文字を使って文学を記すという画期的な手法を確立しました。

その卓越した文章力と歌才は高く評価され、三十六歌仙の一人にも数えられています。

和歌や随筆の分野において、後世の日本文学の基礎を築いた偉大な人物と言えます。

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