白露に 風の吹きしく 秋の野は
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
( 文屋朝康:ふんやのあさやす )

よみかた

しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける

歌の意味

風がしきりに吹きつける秋の野原では、草葉に結んだ白露が吹き飛ばされて、まるで糸を通し留めていない真珠の玉が散り乱れているかのようであるよ。

詩の背景

秋の風に吹き飛ばされるきらびやかな朝露を、糸から解き放たれて散らばる真珠の玉に見立てた、非常に視覚的で美しい和歌です。

真珠のきらめきという華やかな情景の裏に、露のようにはかなく消えゆく命や涙を暗示させ、秋特有の物寂しさを見事に描き出しています。

「文屋朝康:ふんやのあさやす」は何をした人?

文屋朝康(生没年不詳)は、平安時代前期の歌人です。

六歌仙のひとりに数えられる名高い歌人、文屋康秀の息子にあたります。

父親と同様に朝廷での官職(身分)はそれほど高くはありませんでしたが、和歌の才能に恵まれ、宮中などで盛んに催されていた「歌合(うたあわせ)」に数多く参加して活躍しました。

彼の詠む、自然の情景を捉えた繊細で美しい表現は高く評価されており、のちの時代の代表的な歌人である藤原定家も、彼のこの和歌を大変気に入っていたと伝えられています。

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