ある日の放課後、ハルカは図書室で本を選んでいました。すると、本だなの向こうで、図書室の先生とほかの先生が話している声が聞こえてきました。
「来月、作家の先生が学校に来て、お話をしてくださることになったんですよ」
ハルカは、聞くつもりはなかったのですが、その言葉を小耳にはさんで、どきっとしました。作家の先生とは、ハルカが大好きな物語を書いている人だったのです。
家に帰ってからも、ハルカはそのことが気になってしかたありませんでした。けれど、まだ正式に発表されたわけではありません。小耳にはさんだだけの話を、友だちに言いふらすのはよくないと思い、だれにも話しませんでした。
二週間後、朝の会で担任の先生が言いました。「来月、作家の先生が学校に来てくださいます」。クラスじゅうから歓声が上がりました。ハルカも、ようやく大きな声でよろこぶことができました。
作家の先生が来る日までに、ハルカはその先生の本をもう一度全部読み返しました。そして、当日、質問の時間に一番に手をあげることができました。
小耳にはさんだことを、すぐに言いふらさなくてよかった。ハルカは、作家の先生にサインをもらいながら、そう思ったのでした。