中学一年生のまりかは、最近、お母さんに口ごたえばかりしていました。「勉強しなさい」と言われると、「わかってる」とつい強く言い返してしまうのです。
ある日、まりかはおばあちゃんの家に遊びに行きました。おばあちゃんは、古いアルバムを広げて、自分のお母さんの写真を見せてくれました。
「わたしもね、若いころは母に反発ばかりしていたの。でも、自分が親になって、母の苦労がやっとわかったのよ。ありがとうを伝えたいと思ったときには、母はもう遠い所に行ってしまっていたの。」
おばあちゃんは、写真をなでながら言いました。「孝行のしたい時分に親はなし、という言葉があるのよ。だから、まりかは、お母さんが元気なうちに大切にしてあげてね。」
まりかは、胸がきゅっとしめつけられるような気がしました。毎朝お弁当を作ってくれるお母さんの顔が、うかんできました。
家に帰ると、まりかは台所に立っているお母さんに、そっと声をかけました。「いつもありがとう。今日は、わたしがお皿を洗うね。」
お母さんはおどろいた顔をして、それからうれしそうに笑いました。「どうしたの、急に。」
まりかは、ただ笑ってごまかしました。孝行のしたい時分に親はなしという言葉を、心の中でくり返しながら、まりかはていねいにお皿を洗いました。