小学六年生のちひろのクラスでは、そうじの時間に、ほうきを使う係とぞうきんがけの係に分かれていました。
ぞうきんがけは、冷たい水を使うので、みんながいやがる仕事でした。ある日、先生が「ぞうきんがけは、やりたい人がいたら手をあげて」と言うと、だれも手をあげません。ちひろは、しかたなく手をあげました。
ところが、次の日から、ほうきの係の子たちは、ちひろの見ていないところでおしゃべりばかりしていました。ちひろは、一人で何度もぞうきんをしぼりました。
家に帰って、ちひろはお母さんに言いました。「正直者が馬鹿を見るって、こういうことだね。まじめにやるほど損をするみたい。」
お母さんは、ちひろの手を温めながら言いました。「たしかに、そう感じることもあるわね。でも、ちひろががんばっていることは、きっとだれかが見ているわ。」
その週の終わり、学級会で先生が言いました。「この一週間、教室がとてもきれいでした。ちひろさんが、毎日ていねいにぞうきんがけをしてくれたからです。」
クラスのみんなが、ちひろに大きなはく手をおくりました。ほうきの係の子たちも、少しはずかしそうに「次は手伝うね」と言ってくれました。
ちひろは、正直者が馬鹿を見ることばかりではないのだと、ほっとした気持ちになりました。